代表 深津 貴之のルーツを探る - メンバーインタビュー #01
こんにちは。THE GUILDの市川(@nagiko726)です。
今回からは不定期で、インタビューを通し、THE GUILD所属メンバーのパーソナリティを掘り下げていきたいと思います。
初回はTHE GUILD代表、UI/UXデザイナーの深津 貴之(@fladdict)です。これまであまり語られていない自身のルーツを中心に、話を訊きました。
【目次】
・プログラミングから英語まで、目的を達成するために必要なスキルを自分で身につけていった幼少期
・ロンドン留学時代に得た、ディテールではなく本質で語ることの大切さ
・趣味は金工? ユーザー目線で実際に体験してみると見えてくるもの
ー 大企業からスタートアップまで、UI/UXのコンサルティングを通じ、さまざまなプロジェクトに関わられている深津さんですが、そもそもデザイナーを目指したきっかけは?
子どもの頃はデザイナーというよりも、発明家とかプログラマーになりたかったんです。
お絵かきや粘土遊びが大好きだった、みたいなところは原点かもしれないですね。母親が粘土で小物を作ったりとか、編み物をやったりと、手仕事が大好きな人で、それに影響を受けた部分もあります。
あと、その頃はまだ珍しかったパソコンが家にあったんですよね。親が表計算用に買ってきたものだったんですけど、当時はゲームなんかもほとんど無かったので、自分でいじくって遊ぶとなると、プログラミングを覚えるしかなかった。そのために、小学3、4年生のころにBASICを覚えました。
目的を達成するために必要なスキルを身につけていった
その後、ゲームをつくるために、敵を追跡するミサイルの弾道を計算する必要があって、そのために三角関数を勉強して。小学5年生くらいの時でしたね。三角関数が何なのか知らないままに、使い方だけ知ってたという(笑)。
中学生の頃は美術部に所属していたんですけど、工作をしたり、プログラミングをしたりして遊んでいましたね。その頃「マジック:ザ・ギャザリング」というカードゲームを学校で流行らせるために、英語を覚えました。当時、日本語版が存在しなかったので、まずクラスの中で流行らせるための前提として、100ページくらいあるルールブックを自力で翻訳して。
そんな風に、子どもの頃から、何かしら目的があって、自発的に学び、スキルが付いてくるみたいな感じはありました。
ー その後、武蔵工業大学(現:東京都市大学)に行かれるわけですよね。大学では何を専攻されていたんですか?
環境情報学部の都市情報デザイン研究室に所属してました。
都市情報デザイン研究室は、ITによって人々の生活がどう変わるか実験したり、ワークショップをやったりといったゼミでした。子どもや高齢者に携帯を渡して、どんなことが起きるのか観察をしたりとか。
ユーザーインタフェースやユーザビリティの考え方は、この時代にベースができたんだと思います。
あと、大学在学中にインターネットでグリーティングカードを送るサービスを手がける会社でアルバイトをはじめまして、そこではFlashを学びましたね。
ー 大学を出た後は、留学されていた。
ロンドンのセントマーチンズのプロダクトデザイン科に行って、椅子や照明を作ったり、モノ系のデザインを学んでいました。
ディテールではなく本質で語ることの大切さ
留学を通して、人がコンテクスト、文脈を共有しているとは限らないという視点を持てたのは大きかったですね。
例えば、国籍もバラバラの相手にプレゼンするとき、日本人同士とは違って、暗黙の了解が存在しないわけじゃないですか。しかも、それぞれ語学力も違うから、細かいニュアンスも伝わりづらい。
そこでどうするかというと、細かいことは置いておいて、「誰がどう見ても、いいよね」とポイントを見つけて、そこを伝えられれば、本質は伝わる。
ディテールではなく、本質的な部分がどこなのかを突き詰める思考は留学を通して身につけた部分かもしれません。
ー ちなみに深津さんといえば以前から情報発信を積極的にされている印象なのですが、ブログを書きはじめたのはそのころですか?
そうです。2002、3年くらいから。ロンドンにいて、日本との接点が切れてしまうから、何かやらなきゃと思ったのがきっかけで、ブログをはじめました。当初はロンドンや海外の面白いデジタル表現だったり、IT情報を日本に向けて発信する内容でしたね。
そんな生活を送っていたところ、ブログを見た(thaの中村)勇吾さんからmixiでメッセージがきたんです。2年生の夏休みに日本に戻ってきて、一度お会いして、すぐに休学することに決めて、帰国しました。
ー その後thaに入って、3年働かれて、独立するわけですよね。その後、社員を雇ったり、THE GUILDを設立したりと、徐々にチームのメンバーが増えてくるというイメージだと思うのですが、独りでフリーランスをやっていたときに苦労したことってありますか?
自分で作っていたiPhoneアプリが100万本くらい売れていたころになるんですが、トラブルはいっぱいありましたよ。アプリをそのくらい売ると、ユーザーサポートにメールが1000通くらいくるんですよ。それを自分でさばかなきゃいけない。しかも、ユーザーの7割ぐらいが海外の人だったので、英語で。
あの頃、チームをつくってスタートアップ側に行かなかったのは、ひとつの人生の分かれ道ですね。
ユーザー目線で実際に体験してみると見えてくるもの
ー ところで、深津さん、ここ1、2年くらい、週末は金属を打ってるじゃないですか。あれってやっぱりものづくりが好きだったからみたいな部分からですか?
そうですね。元々はハンドメイド関連のサービスに関わらせていただいた時、自分でももちゃんとある程度作ったりしてみないと駄目だろうなと思ったんで、トライしてみた感じです。
ユーザーの目線になって、実際に体験してみることは、重要だなと思っていて、ブログ書くのを再開したのも、そうですね。
ー 何時間くらい打つんですか。
1回3時間くらいで、1個作るのに12時間とか。
ー 無心でひたすら打ち続ける。
バランスをとるのに必死です。
(制作中の銅器。あと2ヶ月程で完成するそう。)
ー ただの趣味ではないわけですよね。そこから得られる学びって?
アドリブと計画のバランス、みたいなところです。
最初に計画を立てて、それに沿ってひたすら作業を進めていくんですね。途中で気軽にUndoしたり、方向転換したりできない上に、手作業なのでどうしても計画からずれてきてしまうことがあるんです。その時に、どこまで諦めて、新しい形にしていくのか。
計画して実行していくことと、計画に沿わなくなってしまうことがわかった時に可能な範囲でどのように方向修正をするのかという思考を同時に走らせなければいけないので勉強になりますね。仕事にも通じる部分がある。
あと、試作的な考えだと、ハンマー1発で精度が出るってありえないんですよ。ハンマーで1回1回力強く叩いて形を作ろうとすると、綺麗な形にはならない。でもそれを3周、4周……と何度も繰り返していくと、確率的な話として、力の方向が分散したり、打たれる場所が分散することで、球に近いところに収束していく。
当たるかもしれないし、外れるかもしれないけど、打ち続ければ平均の値に近づくんで、最終的に平らになったり、真っ直ぐになったり、丸くなったりする。
そんなところからも学びがあります。
あとは、重力で仕事するっていうのも面白いポイントですね。
ー 重力で仕事する?
打つたびに強さが変わってしまうから、”手で打つ”のはNGなんですよ。手で打つんじゃなくて、“重力で落とす“んです。
毎回同じところまでハンマーを上げて、重力で落とせば、常に同じ力で打つことが保証されるので、人間が打ってても、まるでマシーンのように、均一の力で打つことができる。自然の法則をうまく使うことで、本来人間にはできないことができるようになるわけです。
「手で打つ」だとコントロールできないものが、「手で落とす」にするとコントロールできるようになるっていうのは、抽象的だけれども、着眼にはなったなあと自分の中で思います。
ー 自分じゃ逆らえない力を逆に利用するみたいな視点にも繋がりそうですね。
「リンクは青色が一番数値がいい」とか「処理速度が速いとECでモノが売れる」みたいなことって、重力に近い部分があるなと。そこは逆らうことじゃないよな、ってことってありますよね。
ー 金工のほかに最近、興味のあることってありますか?
物理空間にデジタルで情報のビジュアライザーを作るみたいなことは、またやりたいなと思ってますね。物理空間と情報空間をつなぐところで何かできないかなと。
ー ありがとうございました。
深津 貴之 / Takayuki Fukatsu
THE GUILD / Art & Mobile CEO
UI/UX Designer
大学で都市情報デザインを学んだ後、英国にて2年間プロダクトデザインを学ぶ。2005年に帰国し、thaに入社。2013年、THE GUILDを設立。Flash/Interactive関連を扱うブログ「fladdict.net」を運営。現在は、iPhoneアプリを中心にUIデザインやInteractiveデザイン制作に取り組む。
Twitter : @fladdict