「UI/UX × 情緒的な表現で人の感情を動かせるデザイナーに」 小玉 千陽 - メンバーインタビュー #06
こんにちは。THE GUILDの市川(@nagiko726)です。
第6回となったTHE GUILDメンバーインタビュー。今回ご登場いただくのは、先日の女性メンバー座談会にも登場していただいた、アートディレクター、UI/UXデザイナーの小玉 千陽さん(@chiharukodama)です。
学生アルバイト時代から最年少メンバーとしてTHE GUILDに関わり続けている小玉さん。デザイナーとしてプロジェクトに関わる際に大切にしていることや、これから磨いていきたいスキルなどについて話を訊きました。
今回の聞き手は、データアナリストとしてTHE GUILDで活躍中のMr.Datamanこと渡邉さん(@mr_dataman)です。
目次
・相手の目線に立ち、共通言語で伝えること
・ユーザー目線を軸に隙間を埋める
・掛け合わせできるスキルを意識
・アートディレクション×UI/UXデザイン
ー 前回の女性メンバー座談会は、THE GUILDで働く女性という切り口で話を聞いたので、今回はお仕事のお話を中心に伺いたいんですが、小玉さんはアルバイトがTHE GUILDに所属するきっかけになっているんですよね。
そうですね。大学生の頃からウェブ制作会社やデザイン事務所でアルバイトをしていて、その一環でTHE GUILDにもアルバイトとして入りました。大学卒業後、新卒で深津さんの会社(Art & Mobile)に入社して、その後独立しフリーランスとして約2年間、活動していました。
フリーランスで活動している間にお声がけいただいて、一昨年、電通に入社したのですが、7ヶ月ほど勤務したのち退職して、自分の会社を設立。会社設立からは1年半ほど経ちました。
ー アートディレクター、UI/UXデザイナーとして、最近はどんなお仕事をされているんですか?
今、自分が手を動かすものと、そうでないものが半々ぐらい。手を動かすものについては、ウェブやアプリなどサービスとしての全体の世界観づくりから、各画面のデザインまで。シンプルなサイトであればたまにコーディングもしたり。
また、オンスクリーン上のデザインだけではなく、最近ではTHE GUILDの瀬尾さん(@theodoorjp)が立ち上げた哲学カルチャー雑誌『ニューQ』のエディトリアルデザインも担当しています。
哲学カルチャー雑誌『ニューQ』
一方、自分が手を動かさない案件については、コンサルやアドバイザリーのような関わり方が多いです。
ユーザー目線で考えるとこうしたほうがいいよとか、ここは気をつけたほうがいいですというように、サービスや企業の価値をより高めていくためにはどうしたら良いのか意見をさせていただいたり。
あとは、プロジェクトを進めていくにあたって、経営や企画、デザインサイドとエンジニアとの連携やコミュニケーションがスムーズにとれていないような場合に、その間に入って、双方のバランスを取ったり、隙間を埋めていくような立場でお仕事をさせていただくこともあります。
相手の目線に立ち、共通言語で伝えること
昨今、デザイナーが関わることができる領域は、どんどん拡大しています。同時に、ひとつのプロジェクトに関わるメンバーのポジションやスキルセットのバリエーションも多様化している。
そんなとき、私がデザイナーとしてできるのは、どんな人に対しても、共通言語を持つことで、コミュニケーションの隙間を埋めて、いいものを作れるようにプロジェクトメンバーを導いていくことかなと思っています。
ー 共通言語、というと?
先程話したエンジニアとの間に入らせていただくような関わり方もそうなのですが、例えばビジネスレイヤーの方に対しては「これがデザイン的にかっこいいから」とか「ユーザーが使いやすいから」というようなデザイナー目線の意見だけを押し通そうとしても、なかなかうまくいきません。
デザイナーとして、相手の目線に立ち、寄り添ったコミュニケーションをするように気をつけています。
何らかのプロジェクトでゴールが決まってる場合には、プロジェクトを一緒に進行しているクライアントだったり、チームメンバーといった人の目線に立たないといけないですし、それが世の中の不特定多数の人に対して、人を動かしたい、使ってもらいたいというときには、世の中の人や実際に使うユーザーの目線に立たなきゃいけないと思うんですね。
また、ユーザー目線に立ったときに、クライアントの都合でしかないとか、本当に世の中に出しても誰も幸せにならないよねというときには、きちんとお伝えするようにしています。
ユーザーファーストという考え方がベーシックにあるUI/UXデザイナーの私に依頼してくださったのに、それができないと意味がない。
本当に違うときには「違う」と伝えるようにしていますし、それを言える関係性を築けるようにしています。
ー そういった関係性を築くためには、まず信頼を得ないといけない。そのために共通言語を使って隙間を埋めていく。正しいものを正しいと理解してもらうための一手段として、一連のコミュニケーションがあるんですね。
ビジネス視点から「たくさんの機能を盛り込みたい」「いっぱい画面を作りたい」というようなご相談を頂くことも多いのですが、いざユーザー目線で考えてみると、それらは不要なものや機能だったりする。
盛り込むことによって、そのアプリやサービスが複雑になってユーザビリティの低下に繋がってしまうということは多いんです。
入れておくと安心だから入れたくなってしまう、というビジネスサイドの考えも理解できるんですけど、ユーザーが本当に求めているものは何なのか、機能とデザインの間に立って、何をどう削ぎ落としていくか整理する、ということもUI/UXデザイナーにとって大切な仕事です。
ユーザー目線を軸に隙間を埋める
ー クライアントと接していく中で、具体的にどういった隙間が生じますか? それをどうやって埋めているんでしょうか?
制作案件であれば、プロデューサーがいて、ディレクターがいて、エンジニアがいて、デザイナーがいて、というように各々の役割が縦割りになっていて、同じ会社内だけではなく、会社を跨いでチームが組まれてることも多いです。
そんな中で制作を進めていくと、各々自分の会社の役割や自分のロールとして、エンジニアはエンジニア、ディレクターはディレクター、それぞれ成し遂げたいことのベクトルがバラバラになってしまうことが良くあって。
当初は「たくさんのユーザーに使ってもらいたい」「いいものにしたい」といった思いを全員が持っていたはずなのに、それがだんだん抜け落ちていく。
そういうときに、私がUI/UXデザイナーとして間に入り、ユーザー目線という大きな軸を担保することで、隙間を埋める。
関わる人が増えれば増えるほどに「◯◯がこう言ってるから、結局◯◯にしなきゃいけない」と、そこで多くの人が諦めがちです。本当は、そこで誰か1人が頑張ればもっといいものになる可能性があるのに、少しの諦めで可能性を踏み消されてしまう。ここが、今までのウェブ制作やアプリ制作の問題点だったと思うんです。
近年は、UI/UXデザインという分野に注目が集まるようになったので、そこに踏み込みやすくなったというのはありますね。
ー 関わる人たちが最終的に同じベクトルを向くように、「ユーザーのために」という一つの旗を立てて、根本はここを持つべきだよねという指針を示す。初心に戻るじゃないですけど、本質に戻ってこれるかというような核の部分をリマインドする役割。
そうですね。世の中の人に使ってもらいたい、そもそも使ってもらわないと意味がないという状況で、ひとつの軸となるのはユーザー目線なので、そういった形でアサインしていただけることが多いのかなと思います。
ー それは、THE GUILDや深津さんと働いたり、電通で働いたりと、色々な規模で、様々な人たちと関わっていくなかで心得たことですか?
そうですね。アルバイト時代や深津さんの会社で働いていたときから、エンジニアやクライアントと直接やり取りすることが多かったんですけど、いくらデザインを論理的に説明しても、相手に伝わらないということがよくあったんです。
自分が良いと思ってデザインしたものに結びつけていく中で、それが結果的に大きなネックになってしまった。いいものを作るときには、みんなが同じ方向を向いていないといけない、ということを身をもって知ることができました。
掛け合わせできるスキルを意識
THE GUILD関係の人たちとは学生時代から長年、最年少という立場で関わってきました。
この場に身をおいていると、自分はどのポジションを取るべきなのかということを、意識させられるんです。周囲の人たちの動きを見定めながら、自分はどこに向かうべきなのかを考えていく中で、自分のスキルに”掛け合わせ”を増やしていくということは意識しています。
今、取り組んでいるエディトリアルデザインとウェブやアプリのデザインもそうですし、ウェブに関してはデザインだけでなくフロントエンドまで担当していたので、デザイン×プログラミングの掛け合わせができます。働く環境で言えば、大手広告代理店にもいたし、インデペンデントなデザイン事務所や、ウェブ制作会社の経験もある。
今後も、経験を通して自分の中に掛け算できるスキルを増やしていきたいです。
ー 次はここを掛け算できたら、と思っていることはありますか?
圧倒的なアートディレクション力×UI/UXデザインです。まだアートディレクションの部分は未熟だなと思っているので、伸ばしていきたい。
アートディレクション×UI/UXデザイン
ー アートディレクション×UI/UXデザイン。興味を持ったきっかけは?
私は情緒的な部分で、人を爆発的に動かすことができるものを生み出すだけのデザイン力がまだまだ足りてないなと思っていて。
これまでの話にあったように、ユーザビリティ起点のデザインの話はできるんですけど、例えば「悲しい気持ちになったときに、この曲を聞いたらハッピーになるよね」というように、人の感情に強く訴えかけられるようなデザインのエッセンスが欲しい。
UI/UXデザイナーとして、デザインをする時に日々の生活の中でのアプリやウェブの位置付けのようなものを考慮した上で、アートディレクションの世界観で圧倒的に心を打つものを生み出せるようになりたいです。
ー さらに、UI/UXの次の高みといういうところで、情緒的表現の部分をプラスしていきたいと。最後に、小玉さんがデザインを続けている理由って何ですか。
消極的な理由で言うと、私は本当にデザインしかできないんです。中高校生の頃から何かを作って誰かを喜ばせるみたいなことがピュアに好きで、その延長線上でデザイナーという仕事があることを知って、これをやるしかないというか、これしか私にはできないって思って。
アルバイトなど含めると、これまで約8年ぐらいデザイナーを続けているんですが、この間に社会が変わってきたことで、デザイナーとして関われる領域や影響力がどんどん変化していっていて、それがすごく面白い。むしろ、続けない理由がないです。
ー ありがとうございました。
小玉 千陽 / Chiharu Kodama
Art Director, UI/UX Designer
THE GUILD Member / ium inc. 代表
2011年より、エディトリアル、グラフィック、Webのデザイン及びフロントエンドエンジニアとして活動。フリーランスとして活動後、広告代理店を経て、8月よりデザイン事務所ium inc.を設立。アートディレクション、UI/UXデザイン・コンサルティングを中心に活動中。元Art&Mobileメンバー。
Twitter: @chiharukodama