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「完璧なデータなんて存在しないからこそ、コラボレーションが必要」 渡邉 真洋 – メンバーインタビュー #11

THE GUILDメンバーインタビュー、第11回はデータストラテジストの渡邉 真洋さん(@mr_dataman)です。

大企業でのデータ分析経験を経て独立。自身の会社datamanを設立し、THE GUILDでもデータストラテジストとして欠かせない存在の渡邉さん。

大企業の一社員、フリーランス、THE GUILDの一員と立場を変えながら一貫してデータに携わってきた渡邊さんに、さまざまな経験を通じて見えてきたデータの意義や可能性について話を訊きました。

イシューから逆算してデータを見極める

ー データストラテジストとしての渡邉さんのキャリアは、どのようにはじまったのですか?

Yahoo!JAPANに入社し、データ分析の部署に配属されたことがきっかけです。データ分析と聞くと、ログデータを思い浮かべる人が多いかと思いますが、マーケットリサーチやインタビュー設計、ユーザビリティテストなど、定量・定性問わず多種多様なデータを対象としていました。

当時はデータを取得する前の工程、たとえば、アンケートを行う際には調査票の設計、インタビューを行う際にはインタビュイーの選定から携わりました。実査は調査会社に依頼しましたが、調査結果が集まった後は、自らの手でデータ分析をしてグラフ化し、経営層やマネジメント層に報告するところまでを担いました。

― 集まったデータを分析するだけが仕事ではないのですね……

そうなんです。とてもハードな仕事でしたが、(上図の)全ての領域において、調査の設計 → データ分析 → 報告資料の作成 → プレゼンテーションまで一気通貫で携わる経験をさせてもらえる環境は、珍しいのではないかと今でも感じています。Yahoo!JAPANだったからこそ、こうした一気通貫の業務をコマース、メディア、スポーツなど幅広い領域で行うことができたのだと思います。

― 当時はどのようなことを考えながら、データ分析をされていたのですか?

書籍『イシューから始めよ』の著者である安宅さんが元々作った部署ということもあり、「イシューから始める」ということを常に意識させられていました。

データとは、必ずしも数字やログデータであるとは限りません。たとえば、インタビューで得たユーザーの声や、散らばっている情報を集めてキュレーションしたものも、「データ」です。

イシューから逆算した時に、どのデータをどう分析するのが最適なのか。データや分析手法ありきではなく、イシューを起点に最適な選択を考えるのも我々の仕事です。この姿勢は今も変わっていません。

フリーランスになったからこそ広がった世界

― なぜ大企業を離れて、独立しようと思ったのですか?

デザインスタジオでアルバイトした経験もあって、「個人が大きなインパクトを生み出す」という環境が身近にありました。そんな経験から、個人で働くということに魅力を感じていたこともあり、1年ほど前に独立しました。

― データ分析を専門にするフリーランサーって珍しいですよね。

全くいないわけではないのですが、あまり表に出てこないですよね。これがデータ分析を専門にする難しいところでもあると思います。データは1人で取得できるものではないので、どうしても企業側に帰属するんです。

また、アウトプットをわかりやすく提示しづらいことも一因です。たとえば、デザイナーであればポートフォリオを作ったりすると思うのですが、戦略性の高いデータ分析のアウトプットでポートフォリオのような形で公開することは難しく……みんなで作った絵の「この部分は僕が考えました」というしかないのが現状です。

― フリーランスになってから、仕事の内容は変わりましたか?

仕事の内容自体は前職とあまり変わらないですが、音楽、スポーツ、ラグジュアリーといった業界など、携わる領域が広がりました。

フリーランスのデータ分析屋として活動するメリットのひとつは、いろいろなデータに触れられることだと考えています。データ分析者ってデータがないことには何もできないんです。フリーランスにならなかったら絶対出会えなかっただろうデータもあって、多種多様なデータに触れられるありがたみを感じています。

また、データだけでなく、目の当たりにする企業のイシューもさまざまです。フリーランスになると、いろんなことを自分で学ばなければならないわけですが、いろいろなイシューを取扱うからこそ、自分のスキルの発展にもつながっていると思います。「クライアントに成長させてもらっている」という実感がありますね。

― 逆に、フリーランスだからこその難しさはありますか?

フリーランスという立場で得られる情報の解像度が圧倒的に低いと感じています。分析手法は専門書を読めば分かるけれど、実務でのイシューの整理の仕方や、現場で活きる分析の仕方は、書籍からだけではなかなか学べない。フリーランスでも必要なことを学べる環境づくりが今後の課題だと感じています。

そのためには、自戒も込めてですが、まずは知見や情報の共有が必要です。インタビューが得意な人がいれば、ログデータが得意な人もいる。アンケートや市場調査が得意な人もいれば、機械学習が得意な人もいる。そうした多種多様なスキルセットを持った人がより情報発信をするようになれば、業界にとってもよい影響があると思います。コンプラなどもあり難しいところはたくさんありますが。

完璧なデータなんて存在しないからこそ、さまざまなデータを集めていかに統合的にバランスよく分析できることが大切です。

THE GUILDの強みとデータの関係性を表す5つの“D”

― データ分析の担当としてTHE GUILDでももはや欠かせない存在の渡邉さんですが、どのような経緯でTHE GUILDの一員になったのですか?

THE GUILDとの出会いは、国際経営学を学んでいた大学院時代に溯ります。TwitterでTHE GUILDのアルバイト募集を見つけた友達に勧められて応募し、アルバイトをすることになりました。

その後、一度は企業に就職したわけですが、安藤さん(@goando)に声をかけていただき、フリーランスとして独立しました。THE GUILDには、フリーランスになった当初から所属しています。

― THE GUILDにデータストラテジストとして関わる価値や役割についてご自身はどのように感じられていますか?

デザインのイメージが強いTHE GUILDで、データ畑の自分がどんな立ち位置なのかを振り返ってみたとき、THE GUILDという組織を「D」で始まる単語でうまく表現できるなと思いつきました。

Designは言うまでもないですが、まずTHE GUILDの組織としての強みの1つ「Deliver(届ける)」。戦略やプロダクトの文化、メッセージなどを世の中に分かりやすく伝えることに長けたメンバーが多いなと。それはサービスに関してもそうだし、業界全体に対しての働きかけや知見の共有にもいえます。

もう1つの大きな強みは、体験全体を描くという意味での「Describe(描く)」。UIだけを考えるのではなくて、UIを超えた体験を含めて描くことで、プロダクトのあるべき姿を考える文化が根付いている。

Design、DeliverとDescribeを強みとするTHE GUILDでデータ分析屋としてどう役立っていけるか考えた時に、「Define(定義する)」と「Decide(意志決定する)」という言葉に行きつきました。

たとえば、

・定量的にセグメントを定義する
・ユーザーの評価を定量化して定義する
・比較をもとに、リスクや機会を定義する...etc

こうした定義をしっかりし、よりよい意思決定サポートできるのは、データならではの強みです。

相手に届けようとしたメッセージが本当に届いているのか、描こうとしている体験が本当に正しいのか、曖昧でふわふわしているものを確認できるのもデータの強み。デザインとデータをそれぞれ独立させるのではなく、うまく共存させるのが望ましいと個人的には感じています。

THE GUILDの強みを表現する言葉として、もう1つ付け加えるならば、「Dive(入り込む)」ですね。

知識がいくらでもネット上で入手できるようになり、さまざまな情報やノウハウがコモディティ化している今日においても、THE GUILDのメンバーはユーザーを「知る」だけでなく、自分がユーザーとして「入り込んでいく」ことを積極的に行っている。ユーザーに肉薄しているというか……。深津さんはnoteで記事を書きまくっているし、安藤さんは山登りまくっていますし。

また、ユーザーだけでなく、組織においても同じですよね。外部委託されているという第三者的な立場ではなく、組織に深く入り込むことで現場の課題を自分事化したり、そうした姿勢で活動するなかで新たな発想を生んだりして、さらにそれを新しい仕事にもつなげているように思います。

デザイン×データのコラボレーション

デザインファームにデータ分析者が存在するというのは、珍しいと感じています。だからこそ、THE GUILDのデザイナーと組んで、データをうまく活用していくことに可能性を感じています。

たとえば、ペルソナをデータドリブンで作っていくというのも一例です。ありもしないペルソナやカスタマージャーニーを考えるのではなく、データに基づいてペインポイント(顧客の悩み)を定量的に可視化するなど、コラボレーションできるところはたくさんあるはず。

デザインとデータをどうコラボレーションさせられるか、これからいろんな事例を創り出していきたいです。

― ありがとうございました。

渡邉 真洋 / Mahiro Watanabe
Data Strategist
THE GUILD Member / dataman 代表

2015年にYahoo! JAPANに入社し、事業戦略の策定をサポートする部署に配属。定量・定性調査の設計から実施、データ分析を通して、意志決定をサポート。2018年2月に独立し、THE GUILDにパートナーとして参画。現在はIT企業を中心に、データを活用したコンサルティングを行う。

Twitter: @mr_dataman